健康保険適用の単焦点眼内レンズは、遠方や近方などひとつの距離しかピントが合いませんが、『多焦点眼内レンズ』は、遠方や近方など複数の距離にピントが合います。そのため、眼鏡に依存しない日常生活、またはメガネの使用頻度を減らすことが可能となり、QOL(Quality of Life)が向上出来る可能性があります。
仕事や趣味でどの距離をよく見ることが多いか、生活の中で優先したいことは何かを考えた上で、ご自身のライフスタイルに合ったレンズをお選びいただけます。
お仕事や趣味でメガネをかけられない方にも向いています
多焦点眼内レンズを入れた眼では、瞳孔が大きくなっている状態(薄暗い所、暗いところ)で、光が少し滲む、流れるなどの特徴(グレア・ハロ)があります。このため、夜間、車の運転時に気になる方が、時にいらっしゃいます。多くの方は、この現象を感じますが、生活や仕事に影響するような程度になることは少ないと言えます。ただし、職業ドライバーの方は、慎重に医師にご相談されることをおすすめします。
多焦点眼内レンズは、眼鏡なしで遠くも近くも見えるようになりたい、眼鏡から解放されたいと望む活動的な方が適応となります。ただし、現在の医療技術では100%眼鏡から開放することは難しく、距離によって見にくい部分も出てくるため眼鏡が必要となる場合もあります。
国内で認可されている多焦点眼内レンズは2焦点(ピントが合うところ)です。遠方(5m以上)の焦点は共通ですが、近方焦点はいくつか選択できます。近くの焦点をどこに合わせるかについては、日常生活に大きく依存します。
患者さんの仕事内容、趣味などを確認しながら、近方の焦点位置を決めていきます。具体的には、スポーツや買い物などで外に出ることが多い中距離重視型の方は50㎝、パソコンや料理など近中距離を重視する方は40㎝、仕事や日常生活で読書、編み物などの近方作業の多い方は30㎝位ということになります。
逆に多焦点眼内レンズがあまり向かない方もいらっしゃいます。多焦点眼内レンズは、眼の中に入ってきた光を2つに振り分けてしまうため、光を全て活用する通常タイプの単焦点眼内レンズより、見え方の質が劣ってしまう可能性があります。よって、カメラマン、デザイン関係、歯科医など術後の見え方の質にこだわりを持っている方、細かいことが気になりいろいろと考え込んでしまう神経質な方には向かない場合があります。
また、多焦点眼内レンズを使いこなすために高度の網膜機能が必要であるため、網膜疾患などの病気に罹患している場合や非常にご高齢な方などは網膜の機能自体が落ちている可能性があり、見え方の質が劣ってしまうため、非適応となることがあります。